きっぷ,ブログ,運賃計算ルール,鉄道

利用者の便宜を図ったルールとしては、
特定区間と似た「選択乗車」の制度もあります。

これは、指定された区間において、
乗車券に記載された経路=運賃計算に使った経路以外の、
別な経路も選んで乗車できるものです。

2014年6月現在、57の区間が指定されており、
旅客営業規則に掲載されています。

代表的なものは、
新幹線と並行する在来線にかかわるもので、
今では大半がそうした区間ですが、
在来線だけが関係する区間もあります。

例えば、相生~東岡山間には、
山陽本線経由と赤穂(あこう)線経由の2つのルートがあり、
運転本数などの利便性は似たようなものです。

ここは選択乗車ができる区間のひとつに指定されており、
山陽本線経由の乗車券を持っていたとしても、
仮に赤穂線の列車が先に来た場合には、
そのまま赤穂線経由を「選択」して「乗車」しても差し支えありません。
乗車券の経路を変更する必要はなく、
選んだ経路上での途中下車も可能です。

選択乗車が特定区間と異なる点は、
乗車券を購入する際は、
経路を指定しなければならないことです。

必ず、短い方で計算してくれるわけではなく、
距離が長い経路でも乗車券は買えます。

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運賃計算の元となる営業キロ、運賃計算キロは実際に乗る経路どおりに
計算することが原則です。しかし、原則があれば、例外もあるのが世の常。
以前ご紹介した近郊区間など、最たるものかも知れません。

JRの路線には、両者の需要がほぼ等しかったり、列車の運転の都合などに
より同じ区間であっても同等に利用できる経路が複数ある場合があります。

このうち、全国で9つの区間は「特定区間」に指定され、運賃のほか、
特急・急行料金、グリーン料金も、実際の乗車経路にかかわらず、
必ず短い方の経路で計算することとされています。

特定区間では、自動的に運賃計算がおこなわれるので、利用者は
「どちらを経由するか」を申し出る必要がありません。

そしてどちらを経由してもよく、途中下車ができるきっぷであれば、
途中下車もできます。

岩国~櫛ケ浜間における山陽本線と岩徳線(地方交通線である岩徳線の
ほうが短い)の特定区間などは、山陽新幹線の運賃計算にも影響しており、
新岩国~徳山間をとおる場合は、新幹線なのに換算キロがかかわる
運賃計算キロを使わなければなりません。

短絡線として岩徳線が建設され、一時は今の岩徳線が、山陽本線となって、
急行などが経由していたという歴史がこの区間にからんでいて、
今に至っています。

全国で9つの区間は「特定区間」(○がついている経路で計算)は、
以下に示すとおりです。

1.大沼~森(JR北海道)
  ○函館本線(大沼公園経由)/函館本線(東森経由)
2.赤羽~大宮(JR東日本)
  ○東北本線(浦和経由)/東北本線[埼京線](戸田公園経由)
3.日暮里~赤羽(JR東日本)
  ○東北本線[京浜東北線](王子経由)/東北本線(尾久経由)
4.品川~鶴見(JR東日本)
  ○東海道本線(川崎経由)/東海道本線[横須賀線](新川崎経由)
5.東京~蘇我(JR東日本)
  ○総武本線+外房線/京葉線
6.山科~近江塩津(JR西日本)
  ○湖西線/東海道本線+北陸本線
7.大阪~天王寺(JR西日本)
  ○大阪環状線(天満経由)/大阪環状線(福島経由)
8.三原~海田市(JR西日本)
  ○山陽本線/呉線
9.岩国~櫛ケ浜(JR西日本)
  ○岩徳線/山陽本線

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例えば、東京から池袋までJRで行く場合、
山手線内回り電車に乗れば25分ほどで着きます。
ただし、中央快速線に乗り、新宿で埼京線に乗り換えても、
所要時間は25分ほどです。

どちらを選ぶかは人はそれぞれでしょう。
運賃はどちらも220円です。
きっぷを買う時も山手線経由か中央線経由かは尋ねられません。
いちいち尋ねられたとしても、面倒ですね。

これは大都市の「近郊区間」内の駅に相互に
発着する特例に該当するケースです。
近郊区間は東京、仙台、新潟、大阪、福岡の5つの
エリアで設定されています。

この区間内のみを普通乗車券(ICカード乗車券を含む)、
回数乗車券で利用する場合、
片道乗車券として成立する「一筆書き」ルートである限り、
乗車経路は自由です。

運賃は、乗車駅と下車駅との最短距離で計算するという、
ルールがあります。
路線の数が多く、複数の経路が選べるケースがあちこちにある
ため、乗車券の発行の手間を省くために設けられた制度です。

東京~池袋間の場合は、
山手線田端経由が最短(12.3Km)で、
山手線内の運賃が適用されて220円となっています。

なお、近郊区間のみ通る乗車券は、距離や運賃にかかわらず
途中下車はできません。有効日数も1日限りです。これは、
上野~いわき、新宿~松本といった区間でも同じです。

「近郊区間を飛び出さず、途中で改札口も出ずに、
一筆書きルートで乗る限り、
乗車経路は自由」という制度を活かした遊びが、
いわゆる「大回り乗車」「150円旅行」というものです。

なお近年、この近郊区間は拡大傾向にあります。Suicaなどの
ICカード乗車券の普及とエリア拡大によるものです。

現在、JR東日本ではSuicaが使えるJRの路線は、
すべて近郊区間に含まれています。
仙台や新潟の近郊区間は、Suica導入時に設定されました。

これは、運賃を下車時に引き落とすというICカード乗車券の
性質上、そもそも事前の乗車経路の指定が不可能であることから、
いわば近郊区間に関するルールを逆手にとって、Suica利用
可能エリア=近郊区間としたものです。