きっぷ,ブログ,運賃計算ルール,鉄道

運賃計算の元となる営業キロ、運賃計算キロは実際に乗る経路どおりに
計算することが原則です。しかし、原則があれば、例外もあるのが世の常。
以前ご紹介した近郊区間など、最たるものかも知れません。

JRの路線には、両者の需要がほぼ等しかったり、列車の運転の都合などに
より同じ区間であっても同等に利用できる経路が複数ある場合があります。

このうち、全国で9つの区間は「特定区間」に指定され、運賃のほか、
特急・急行料金、グリーン料金も、実際の乗車経路にかかわらず、
必ず短い方の経路で計算することとされています。

特定区間では、自動的に運賃計算がおこなわれるので、利用者は
「どちらを経由するか」を申し出る必要がありません。

そしてどちらを経由してもよく、途中下車ができるきっぷであれば、
途中下車もできます。

岩国~櫛ケ浜間における山陽本線と岩徳線(地方交通線である岩徳線の
ほうが短い)の特定区間などは、山陽新幹線の運賃計算にも影響しており、
新岩国~徳山間をとおる場合は、新幹線なのに換算キロがかかわる
運賃計算キロを使わなければなりません。

短絡線として岩徳線が建設され、一時は今の岩徳線が、山陽本線となって、
急行などが経由していたという歴史がこの区間にからんでいて、
今に至っています。

全国で9つの区間は「特定区間」(○がついている経路で計算)は、
以下に示すとおりです。

1.大沼~森(JR北海道)
  ○函館本線(大沼公園経由)/函館本線(東森経由)
2.赤羽~大宮(JR東日本)
  ○東北本線(浦和経由)/東北本線[埼京線](戸田公園経由)
3.日暮里~赤羽(JR東日本)
  ○東北本線[京浜東北線](王子経由)/東北本線(尾久経由)
4.品川~鶴見(JR東日本)
  ○東海道本線(川崎経由)/東海道本線[横須賀線](新川崎経由)
5.東京~蘇我(JR東日本)
  ○総武本線+外房線/京葉線
6.山科~近江塩津(JR西日本)
  ○湖西線/東海道本線+北陸本線
7.大阪~天王寺(JR西日本)
  ○大阪環状線(天満経由)/大阪環状線(福島経由)
8.三原~海田市(JR西日本)
  ○山陽本線/呉線
9.岩国~櫛ケ浜(JR西日本)
  ○岩徳線/山陽本線

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例として、北千住ー天王台間(28.8キロ、電車特定区間)をみます。
通しで1カ月定期券を買うと14,170円です。

これを、北千住ー馬橋間(13.9キロ、電車特定区間)、
馬橋ー天王台間(14.9キロ、電車特定区間)と分けて定期券を
買えば、6,580円×2=13,160円です。
1,010円の節約となります。

上野ー取手間は「電車特定区間」、取手以遠は本州3社の幹線運賃です。
したがって、「電車特定区間」と「幹線」をまたがって利用している
ときの定期運賃は、本州3社の幹線運賃が適用となります。

土浦ー日暮里(63.8キロ、本州3社の幹線)の6カ月定期運賃は
165,330円です。

これを土浦ー馬橋間(34.7キロ、本州3社の幹線)
85,540円、馬橋ー日暮里間(19.1キロ、電車特定区間)
44,260円と2つに分けると129,800円で、35,530円もの
節約ができてしまうのです。

104キロの例でみると、104キロの6カ月の定期代は、
270,860円(100キロ)+28,520円(4キロ)
=299,380円です。

70キロと34キロに分けると
193,240円(70キロ)+98,220円(34キロ)
=291,460円

その差は、7,920円です。2つに分けるとこんなに安くなります。
101キロ以上から通う人は、定期券を2つに分ければ安くなることを、
頭に入れて研究されることをお勧めします。

幹線と、電車特定区間、山手線を「特定区間」をまたいで通っている方は、
2つに分けると、とんでもない節約が見込めるのです。

定期運賃は普通運賃をもとに決まるので、
普通運賃のところで2つに分ければ、
安くなる例をみたように定期運賃も同じような意味で
2つに分けると安くなります。

さらに、1カ月の定期運賃では遠距離になるほど割引率が悪くなったのですが、
6カ月定期では遠距離になるほど割引率が良くなるので、
2つに分けると安くなる例が多くなります。

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JRの時刻表には定期運賃は100キロまでしか掲載されていません。
100キロを超えたときには、例えば101キロの時の定期運賃は、
100キロの定期運賃+1キロの定期運賃となります。

つまり、
 47,510円+4,620円=52,130円となります。
そこで、101キロを超えるような場合は2つに分けたほうが安くなることが多いのです。

今の例でみますと、例えば101キロを50キロと51キロに分けて
買うと、
24,250円(50キロ)+24,790円(51キロ)
=49,040円で、101キロの定期運賃より3,090円安く
なります。

通しで買うより、101キロ以上の場合、6カ月の定期では安くなるところが増えます。

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1~3キロ(JR3社の幹線)の6カ月の定期運賃は
22,160円です。
1カ月の定期運賃は4,620円との関係を計算してみますと、

140円×30日×6カ月×1.1=27,720
≒27,720×0.8=22,160(6円は切り捨て)

出てきた27,720円に0.8を掛けるというのは80%、
言い換えれば2割引きであることを意味しています。

つまり1か月分の定期運賃の6倍(6カ月分)の
2割引きということです。

1~25キロまでは、
”消費税を含まない運賃×30×6カ月×0.8×1.1(消費税)”と
いう計算式で6カ月運賃は出ます。
しかし、1カ月定期の6カ月分の20%引きというのは、1~25キロまでです。

それ以上の距離では、割引率が違って、率は低くなっています。
例えば、50キロの6カ月定期運賃で見てみますと、

24,250×6カ月
=145,500×X=123,560円

X=85%(厳密にいううと84.9%)となります。
ことばを換えていえば15%引きということです。
このように26キロ以上では割引率が下がっているのです。

遠距離になれば割引率が低くなるので、
50キロのところから通う人の場合、
25キロずつ分けて買うならどうなるかといえば、
25キロの6カ月の定期運賃は60,180円、
60,180×2=120,360円です。

通しで買った50キロの定期運賃は123,560円ですので、
2つを比較すると、通しで買うより分けて買ったほうが、
3,200円安くなります。このような”現象”は、
25キロでは20%引きなのに、
50キロでは15%しか割引にならないために起こります。

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3カ月定期券の計算は下記のようになっています。

1~3キロ
 140×30×3カ月×1.1=13,860×0.95
 =13,167→13,170円
4~6キロ
 170×30×3カ月×1.1=16,830
 =16,830×0.95=15,989→16,000円
7~10キロ
 180×30×3カ月×1.1=17,820×0.95
 =16,929→16,930円
11~15キロ
 220×30×3カ月×1.1=21,780×0.95
 =20,691→20,690円

これでお分かりのように、3カ月の定期運賃は、1カ月定期運賃の3倍の5%引きになっています。

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普通運賃のところで、JRの普通運賃は区間制をとっているため、
問題が多いと記述しましたが、1回こっきりの普通運賃と比較して、
毎日乗車するような定期運賃では矛盾が噴出してしまいます。

つまり、26キロ区間の定期運賃が30キロ区間の定期運賃が同じでは、
26キロの人の気持ちが納まりません。そこで26キロ以上では差を
設けて、気を鎮めるようにようにしているのでしょうか?

1~25キロまでの定期運賃は(区間内は同一定期運賃)とは違った
形となっています。

また、幹線の1カ月の定期運賃が区間ごとにどのように上がっていくかを
みると26キロ~30キロまでの間では、
26キロと27,28,29、30が違いますが41キロ以上では、
各キロごとに違っています。

35キロと36キロでは、1,520円の違い、40キロと41キロでは
1,010円の違いがあるのに対し、45キロと46キロでは80円の違いと
なっていて、上がる金額がだんだん小さくなっています。

これで徐々に距離比例に運賃が上がっていく様子がわかります。
普通運賃のところで記述しましたが、距離比例運賃では矛盾が
少なくなります。そのため2つに分ければ安くなるいうのは
45キロ以上ではなくなってしまうのです。

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定期運賃は、普通運賃をもとにして決まっています。
1~3キロ(本州3社の幹線)の普通運賃を例としてみてみましょう。
この区間の普通運賃は、150円で、定期運賃は4,620円です。
「150×30×1.1=4,950円(1.1は
消費税です)の計算だ。」と考えることができます。

330円の違いがあることがおわかりのことと思います。

そのわけは、150円の普通運賃には10%の消費税を含んでいるためです。
140円(消費税導入前の運賃)×1.1=154円
4円の切り捨てで、150円です。
それで定期運賃にも10%を掛けると消費税の2重ドリとなってしまうため
です。

4,620円というのは消費税導入前の運賃をもとに計算し、それに10%を
掛けたものなのです。
140円(消費税導入前の運賃)×30×1.1=4,620円

このように消費税導入前の普通運賃×30×1.1が1~25キロまで
の定期運賃です。

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今回は、具体例でかんがえてみましょう。

東京ー真鶴(神奈川県)は95.8キロ(運賃は1,690円)です。
もう少しで100キロです。
101キロ以上のきっぷを持っていれば途中下車も可です。
その都度きっぷを買わずにすむわけですから、
この場合熱海まで(104.6キロ)のきっぷを買って出かけました。

そしてつぎのように途中下車しました。

東京(170円)品川(220円)川崎(220円)
横浜(310円)大船(330円)平塚(420円)
小田原(240円)真鶴

合計金額は、1,910円です。
東京ー熱海の運賃は1,980円ですので、
確かにその都度きっぷを買う手間が省けましたが。
金額は70円高くついてしまいました。

どの位途中下車をしなければ引き合わないか?
同じコースで次のような途中下車をしました。
大船までは上記の例と同じです。

東京(170円)品川(220円)
川崎(220円)横浜(310円)
大船(190円)藤沢(200円)
茅ヶ崎(190円)平塚(240円)
国府津(200円)小田原(240円)
真鶴

運賃合計は2,180円です。
100キロ未満のところへ行く場合、
この程度、途中下車しなければ、
101キロ以上のきっぷを
使うメリットがでてこないのです。
しんどいですね!

Sきっぷなどの各種割引きっぷは、
途中下車を禁じています。
この種のきっぷの利用の際は、気をつけなければなりません。

このきまりを知らずにうかつに途中下車をしようものなら、
さっ!ときっぷを取り上げられてしまい、悔しい思いをしますよ!

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①101キロ以上のきっぷを持っていれば途中下車は可、ということに
 とらわれずに、降りる駅によって分けてきっぷを買ったほうが安い
 場合があるので、要注意です。見分け方は、出発駅から目的駅までの
 距離をみることです。

 例えば鹿児島本線小倉(福岡県)から久留米(福岡県)へ行くとき、
 JR時刻表をめくってみて距離をみます。そうすると、
 103.9キロ(運賃は2,170円)であることがわかります。

 たった、3,9キロで前の区間より、運賃が320円上がっています。
 こんなときは途中で分ければ必ず安いところがある、と香椎
 (かしい、福岡県)あたりはどうか当たりをつけてみます。
 

 小倉ー香椎(58.9キロ)1,130円です。香椎ー久留米はどうか。
 44.1キロで860円です。しめて、1990円です。分けたほうが
 やっぱり180円安かった!と、こんな計算をしてみるのです。
 自分でよく利用する線の計算をしてみることをお勧めします。

➁出発駅から見て最終駅までの距離が90キロ以上あるとき、途中で
 たびたび下車するようなときは101キロ以上のきっぷを買ってしまった
 ほうがいい場合もあります。最終駅までのキロが95キロ、惜しいなあ!
 なんて考えずに発想を転換する必要があります。

 ただ、つぎの例でみるようによほど頻繁に途中下車をしなければ安く
 なりませんので(東京ー横浜のような場合は別です。)、注意が
 必要です。
 

 これは、91-100キロから101-120キロの運賃の上がり方が
 一挙に本州3社幹線は290円、JR北海道幹線は320円、JR四国は
 300円、JR九州は320円、本州3社・JR北海道の地方交通線の
 場合100円も高くなるからです。

次回は、具体例でかんがえてみましょう。

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前述の方法は、前記事の山手線発着のようなところに限られるかといえば、
決してそうではありません。
山陽本線竜野(たつの、兵庫県)から
大阪(104.1キロ)1,980円へ行く場合、
途中の垂水(たるみ、兵庫県)で用があったときよりも、
同じく通しで買うより、別々にきっぷを買ったほうが安くなります。

                     きっぷ(IC乗車券も同額)
 竜野ー垂水(57.9キロ)             990円
 垂水ー大阪(46.2キロ、大阪の電車特定区間)   810円
 合計                      1,800円

と、180円安くなりますし、同じく神戸で途中下車のときも、
それぞれ次のように分ければ分けたほうが

               きっぷ(IC乗車券も同額)
 竜野ー神戸(71キロ)    1,340円
 神戸ー大阪(特定区間)       410円
 合計              1,750円

で、230円安くなります。

上記の例はJR西日本管内なので、
JR東日本のようにIC乗車券の1円運賃設定はありませんので、
きっぷもIC乗車券も同額の運賃設定となります。
JR東海も同様です。

分けて買うと高くなってしまう例を一つ上げてみます。
東京から名古屋へ行く途中で静岡で途中下車するとします。
通しできっぷを買うと6,380円です。静岡まできっぷを買って出かけると、

 
                 きっぷ(IC乗車券も同額)
 東京ー静岡(180.2キロ)    3,410円
 静岡ー名古屋(185.8キロ)   3,410円
 合計                6,820円

分けたほうが440円も高くなってしまいます。